忘れられないパン屋さんの思い出(7)

🔳 モーンプルンダー──ケシの実香る、ご褒美デニッシュ

本日は、パペットのデニッシュの中でも私がいちばん好きだった モーンプルンダー をご紹介します。

モーンプルンダーは、ドイツのケシの実を使ったデニッシュ。

「モーン」はケシの実、「プルンダー」はデニッシュを意味します。

たっぷりのケシの実ペーストをバターを折り込んだ生地にくるりと巻き込み、香ばしく焼き上げたお菓子です。

ひと口かじると、サクッと軽い生地の中から、甘く煮込まれたケシの実の深い香り。

仕上げにかかったラム酒風味のグレーズが、控えめながらも全体をふんわりまとめてくれます。

バターの塩味とほのかな甘みのバランスが絶妙で、私にとってまさに*「ご褒美パン」*でした。

それにしても、こんなに美味しいのに、街で見かけることが少ないのが残念です。

🔳 エスプレッソか、ストレートティーか

モーンプルンダーにはエスプレッソがよく合います。

やはり、濃厚な味わいには深煎りのコーヒーがぴったりです。

──でも、ちょっと待ってください。

以前、紅茶のほかにチョコレートも扱っていたことがあるのですが、

そのチョコレートは「カカオという素材」そのものを感じられる、かなりマニアックなものでした。

子どものころ、チョコレートといえば「バリバリ噛んでぱくぱく食べる」ものでしたが、

そのチョコレートは、ほんの小さなかけらを舌の上にのせ、ゆっくりと溶かして味わう。

カカオの余韻が口いっぱいに広がり、香りが長く残るのです。

そんなチョコレートには、何も加えないストレートの紅茶がよく合いました。

素材の余韻と紅茶の透明感が、静かに響き合うように感じられます。

…すこし横道にそれてしまいましたね。

🔳 パペットのもうひとつの魅力

パペットにはモーンプルンダーのほかにも、

胡桃、ダークチェリー、洋梨などのデニッシュがありました。

そして、あんぱん、クリームパン、チョコレートコロネもあります。

中でもダークチェリーのデニッシュは、見た目にも華やか。

その辺の缶詰のチェリーとはまるで違い、しっかりと果実味を感じる味わいでした。

次回は、懐かしい チョコレートコロネ のお話を。

どうぞお楽しみに。

温かい紅茶とともに、静かな午後を。


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