忘れられないパン屋さんの想い出【12】小さな店内に流れる『体温の通った』時間


   

🔳 ブランド設立前、試飲の紅茶から始まった交流

バベットさんでの営業は、仕入れた紅茶と例のチョコレートからスタートしました。

まだ自分のブランドを立ち上げる前でしたので、パッケージも仕入れた状態のまま。それでも不定期に試飲用の紅茶を用意し、私はお店の片隅に立ちました。

🔳 個性が集う場所:予期せぬ出会いと発見

バベットに集まるお客様は、驚くほど個性的で、ご自身のスタイルを確立されている方が多かったように思います。

建築家、画家、洋菓子の先生、大学関係者、作家……。

そんな多才な方々と対面する日は、背筋が伸びるような緊張感もありました。

けれど、その予期せぬ出会いはいつも、私に思わぬ喜びや新しい発見を運んでくれました。

話に花が咲いていると、いつの間にか奥からご主人が顔を出し、会話の輪に加わっている。

ほんの僅かな時間。

けれど、あの小さなパン屋さんの中には、外の世界よりもずっと大きくて広がりのある「時」が流れていました。

🔳 小さな命と「人情」

バベットのご夫婦の温かさを象徴する、忘れられないエピソードがあります。

ある時、お店の駐車場に子猫が捨てられていました。

お二人は悩み抜いた末、「きっと私たちに飼ってほしいということなのかもしれない」と、その子を迎える決意をされたのです。

お子さんのいらっしゃらないお二人にとって、その猫はかけがえのない家族になりました。気がつけば猫が猫を呼んだのか、家族は3匹に。

お二人の優しさが、そのままお店の空気感になっていたのだと感じます。

🔳 「白魚のような指」から「立派な労働者の指」へ

お二人がバベットを始められたのは、50歳を過ぎてからのこと。

毎朝5時には二人分のお弁当を作り、お店に立ち、夜の7時まで働く。その毎日は、想像を絶するほどクタクタだったはずです。

それまで絵筆しか持ったことがなかったという、ご主人の白魚のような美しい指。

奥様いわく、その指もすっかり**「立派な労働者のものになった」と――。

慣れない重労働を積み重ね、パンを捏ね、日々を積み上げてきた証が、その手に刻まれていました。

🔳 世の中で一番偉いのは

そして、ご主人の口から出た忘れられない言葉があります。

「世の中で一番偉いのは、汗水流して働く労働者だ」

この言葉は、今も私の胸に深く刻まれています。

本質を見極め、自分の足で立ち、地道に手を動かし続けることの尊さ。

バベットさんで過ごした時間は、私に「働くことの誇り」を教えてくれた、人生の宝物です。

#画像はイメージです


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