忘れられないパン屋さんの想い出(3)

さてさて、ハードトースト、パンドミの次は――イギリスパン。

蓋をせずに焼く、山型のパンですね。

「イギリスパン」という呼び名は日本独特のもので、本国では White bread と呼ばれ、もっとも一般的なパンを指すそうです。

イギリスの番組では、薄くスライスしてカリカリに焼いたトースト🍞をよく見かけます。

バベットのイギリスパンは“ヒキ”があって、トーストにしてもサンドイッチにしてもグッド。

もちろん、トーストしたパンでつくるサンドイッチも美味しかったです。

私はいつも、6枚切りにしてもらっていました。

通ううちに、顔馴染みの方も増えてきました。

国立から自転車で来るアートなご夫婦。

大学にお勤めの双子の姉妹。

画家。過去を秘めた謎のおばあさま。

ちょっと名の知れたパティシエに、建築家などなど。

不思議なことに、どの方も例外なく「料理が好き」でした。

国立から来ていたご夫婦とは、

いまでも忘れられない会話があります。

――ひよこ豆やレンズ豆🫘などの缶詰、

その汁を「使う派」か「捨てる派」か、という話。

確かご夫婦は“使う派”、バベットのご主人は“捨てる派”。

私はというと……捨てる派だったけれど、最近は使うことも。

大学にお勤めの双子の姉妹さんは、いつも自前の袋を持参して、

「パンの焼いた耳のかけらも美味しいの」と嬉しそうに言っていました。

それを聞くバベットのお二人も、本当に嬉しそうだった。

実際、その通りなのです。

姉妹さんはインドにもよく行っていて、

現地で紅茶を買って帰るのが常だったようです。

お話の内容はどれもレアで、聞いているとウキウキしてしまいました。

バベットにも紅茶が置いてありました。

缶入りの Ahmad(アーマッド)。英国紅茶ブランドですね。

お店に置いてあったのはダージリン、アッサムぐらいだったと思います。

アーマッドも、美味しいですね。

通い始めた頃の私は、紅茶の講師の資格を取ったばかり。

見るもの聞くもの、すべてが刺激的で興味が尽きませんでした。

イギリスパンの次はレーズンブレッド。

生地は特に甘くはありませんが、ほどよい量のレーズンが入り、

そのままでも美味しかったです。

 

パンと紅茶と、あの人たちとの時間。

ふと思い出すと、ふわりと温かくなります。

次は、いよいよバゲットの想い出を。

では、今日はこのへんで。



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